劣等感を抱いていた私が、少しずつ自分の人生を好きになれた理由

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こたつの中で、毎日が止まっていた

2021年2月。

北海道ママのオンラインコミュニティニアラボメンバーのひとりである「けいこさん」は旦那さんの転勤をきっかけに北海道へやってきました。千葉県で生まれ育ち、北海道で暮らすのははじめて。北海道に来た時は妊娠中で、世の中はコロナ禍。気軽に人と会える雰囲気でもなく、外では雪が降っている。知らない土地で、これから子どもが生まれる。心細くならないほうが難しいタイミングだったのだと思います。

「節約もしなきゃかなって思って、ずっとこたつの中に入って、ひたすらスマホを見る1日でした」

その言葉に、当時の閉じた空気がにじみます。
何かがすごくつらかった、というより、毎日が静かに止まっていた。前に進んでいる感じがしない。そんな時間だったのかもしれません。

こうして8月に出産してからも、状況が大きく変わったわけではありませんでした。子どもはもちろんかわいい。でも、自分自身の世界はどこか小さいまま。知り合いもなかなかできず、「ここで私はどうやって生きていくんだろう」と、答えのないまま日々だけが流れていたのかもしれません。

「ママ友は作らない」と決めていた

そんなけいこさんには、当初から自分の中で決めていたことがありました。

それは、「ママ友は作らない」ということ。

少し意外にも聞こえますが、その背景にはけいこさんなりの不安がありました。初めての妊娠。初めての出産。まだ見えないことだらけの中で、ママ友という存在は、どこか“怖いもの”のように感じていたそうです。

「なんとなく、ドロドロしていそうで、怖いイメージがあって」
そう過去を振り返るけいこさん。

子どもを介してつながる関係は、近いようでいて、実はとても繊細です。価値観が合うかどうかもわからないし、深く関われば関わるほど、しんどくなることもあるかもしれない。しかも転勤族なら、せっかく仲良くなっても、また離れてしまう可能性がある。


だったら最初から、あまり踏み込まないほうがいい。表面上だけ、さっぱりしていたほうがいい。そんなふうに、自分の気持ちを守っていたのだと思います。

でも本当は、誰ともつながりたくなかったわけではないはずです。
話したい。笑いたい。母親としてだけではない時間もほしい。そんな気持ちまで、消えていたわけではなかったのでしょう。

「怪しいかも」と思った場所に、人生の転機があった

北海道ママのオンラインコミュニティ「ニアラボ」代表のことを知ったのは、お出かけ情報の発信がきっかけでした。
北海道での暮らしに役立つアカウントとしてフォローしていたものの、ニアラボの存在を知ったとき、最初の印象は決して前向きなものではなかったといいます。

「オンラインコミュニティって、ちょっと怪しいなと思って(笑)」

その感覚は、とても自然です。
顔が見えるようで見えない。どんな人がいるのか、輪の中に入れるのかもわからない。気になってはいるけれど、最後の一歩が踏み出せない。そんな距離感だったのだと思います。

けれど、そのあともニアラボの発信はずっと気になっていました。
見送ったあとに、「やっぱり入ればよかったな」と思うこともあったそうです。

そんなけいこさんの背中を押したのが、ニアラボの飲み会の様子をインスタで見かけたことでした。

「ママになっても、飲み会に行けるんだ、って思ったんです」

この一言が、なんだかとても象徴的でした。
飲み会に行けること自体が大事だったのではなく、母になっても“自分として出かけていい”と思えたこと。その感覚が、けいこさんの中で小さな風穴を開けたのだと思います。

2023年11月、けいこさんはニアラボに入ります。
ただ、楽しみにしていた飲み会の頃には第二子の妊娠がわかり、お酒は飲めなくなってしまいました。それでも、「行ってよかった」とはっきり話してくれました。

「飲めなかったけど、本当に楽しくて。北海道に来て初めて、そういう場に行きました」

転勤してから、友達がいなかった。
だからこそ、その時間はただの外出ではなかったのだと思います。みんなで話して、笑って、「楽しい」と心から思えたこと。その手応えが、けいこさんの中で何かを動かしはじめました。

“ママ友”じゃなく、“自分の友達”ができた

けいこさんがニアラボに惹かれた理由は、そこがいわゆる“ママ友の場”とは少し違って見えたからでした。

子どもを介してつながる関係というより、ママである前に、一人の女性として、一人の大人として関われる場所。そう感じたといいます。

「子どもを介した友達っていうより、自分自身として入っていける感じがあったんです」

この感覚は、とても大きいと思います。
母親になってからの人間関係は、どうしても“誰かのママ”として始まることが多い。でもニアラボでは、子どもの話だけで終わらない。自分の気持ちや、自分の好きなこと、自分のこれからの話もできる。そこに、けいこさんは安心したのだと思います。

合同誕生日会やバーベキュー、写真を上手に撮るコツを学ぶ会。いろいろな場に参加するうちに、何度も会う人とは少しずつ距離が縮まり、初めて会う人とは新しい縁が生まれていく。
その積み重ねの中で、けいこさんは北海道で初めて、「自分の友達」ができたと感じられるようになっていきました。

それは、ただ知り合いが増えたという話ではありません。
閉じていた日々の中に、自分から会いたいと思える人ができた。予定を入れたいと思える場所ができた。そのこと自体が、人生の景色を変えていったのだと思います。

劣等感で止まっていた人生が、「私もやってみようかな」に変わった

今回の取材で、いちばん心をつかまれたのは、けいこさんが「昔は劣等感の塊みたいだった」と話してくれた場面でした。

「あの人いいな、綺麗だな、すごいなって思って、妬むような人生だった」

すごく率直な言葉です。
でもきっと、その気持ちに覚えのある人は少なくないはずです。誰かのキラキラがまぶしい。羨ましい。なのに、自分はそこへ行ける気がしない。だから、見て落ち込んで、また止まる。その繰り返し。

けいこさんも、以前はそうだったといいます。
でも今は、同じ“いいな”でも、その先が違う。

「今は、いいなって思ったら、私も行こっかな、私もやろっかなって思えるようになったんです」

この変化は、本当に大きい。
誰かを見て落ち込むのではなく、自分の可能性を開くきっかけにできるようになったこと。羨ましさを、行動に変えられるようになったこと。
それはきっと、外から見れば小さな変化かもしれません。でも本人にとっては、生き方の土台が変わるくらいの出来事だったはずです。

実際に、けいこさんは「フットワークが軽くなった」と話していました。
安定や安心を求める自分がいた。それは今もきっと変わらない。でも、それだけではなくなった。みんなが自分の人生を楽しんでいる姿を見て、「私も好きなことをやってみようかな」と思えるようになった。その感覚が、毎日を前向きに変えていったのです。

自分でかけていたブレーキを、少しずつ外していった

では、なぜそんなふうに変われたのか。
けいこさん自身も、はっきりとは説明できないようでした。けれど、話を聞いていると、ひとつわかることがあります。

それは、いきなり別人になったわけではない、ということです。

最初は、オンラインコミュニティが怪しく見えた。
初めてDiscord(ニアラボのプラットフォーム)に書き込むときも、「誰からも反応がなかったらどうしよう」と緊張した。けれど、返事が返ってきたことで安心した。そこから少しずつ書き込めるようになった。イベントにも参加できるようになった。アーカイブも見てみた。耳だけで流しながら、少しずつ考え方が変わっていった。

…大きな一歩ではなく、小さな一歩の積み重ねだったのです。

その中で、けいこさんの言葉としてとても印象的だったのが、この感覚でした。

「やってもいいんだ、って思えるようになった」

できるかどうか、ではなく。
やってもいいかどうか。
多くのママが、無意識のうちにそこにブレーキをかけているのかもしれません。

もうお母さんなんだから。
綺麗になりたいなんて思わないほうがいいかもしれない。
自分にお金を使いすぎないほうがいいかもしれない。
やりたいことより、まず家族。

そんなふうに、自分の気持ちを後回しにするのが当たり前になっている。でもけいこさんは、そのブレーキを少しずつゆるめていきました。

「やりたいと思ったなら、やってもいいんじゃない?」

その許可を、自分に出せるようになった。
それこそが、けいこさんの“人生が変わった”ということの本質なのだと思います。

学びも、友達も、毎日の一部になった

けいこさんにとってニアラボは、今では特別な場所というより、もう生活の一部になっています。

朝起きたら見る。
ちょっと休憩中にのぞく。
テレビをつける代わりのように、自然とそこにある。

この“溶け込んでいる感じ”もまた、彼女を変えていった大きな理由のひとつなのでしょう。
特別な日にだけ背中を押されるのではなく、日々の中で少しずつ考え方が育っていく。学びのアーカイブを耳で流しながら、自分が満たされていないと人に優しくできないことを知る。しんどいときは頼っていい、疲れたら寝ていい、自分の好きなことをしていい。そんな言葉を、何度も自分の中に通していく。そうするうちに、子どもに当たることも減っていったといいます。

誰かに劇的に変えてもらった、というより、
あたたかい空気の中で、少しずつ自分の人生を取り戻していった。

そんな変化だったのではないでしょうか。

これからは、「どうせ無理」で終わらせたくない

今、けいこさんは看護師として働いていたのですが、今後また転勤で北海道を離れることに。それに伴ってお仕事も退職しなくてはいけないこともあり、別の道にも少しずつ目を向けています。
いろいろなママたちの話を聞き、挑戦している姿を見て、別の道も考えられるようになったのだとか。

もちろん、まだ模索中です。
でも、以前のように「安定・安心のままでいい」と思っていた頃とは、もう少し違う景色が見えている。

もっといろいろ経験してみたい。
もっといろんな場所に行ってみたい。
今までやったことのないことをやって、もっと人生を楽しくしたい。

その言葉は、取材の締めくくりとしてとてもまっすぐでした。
何かを達成したから人生が変わったのではない。大きな肩書きがついたからでもない。
“これからの自分に期待してみたい”と思えるようになったこと。たぶん、それが何より大きな変化なのです。

最後に、ニアラボに入ろうか迷っている人への言葉をお願いすると、けいこさんは笑いながらこう言いました。

「とりあえず入っちゃいなよ、って思います」

軽やかだけれど、そこには実感がありました。
なぜなら、けいこさん自身がその一歩で、止まっていた毎日を動かしてきたからです。

どうせ転勤するし。
友達なんてできないし。
オンラインコミュニティなんて、ちょっと怪しいし。
お母さんなんだから、自分のことは後回しでいいし。

そんなふうに思っていた人が、今は「もっと人生を楽しくしたい」と話している。
その変化は派手ではありません。けれど、確かに人生の向きを変えるものです。

誰かみたいになれた、という話ではない。
けいこさんが、けいこさん自身の人生を、少しずつ好きになれるようになった。

この記事でいちばん伝えたいのは、そのことです。

子育て中だから、転勤族だから、今さら遅いから。そんなふうに自分の気持ちにふたをしてしまうことは、きっと誰にでもあります。でも、小さな一歩が毎日の景色を変えることもあるはずです。誰かのようにならなくていい。あなたのままで、あなたの人生をもう一度ひらいていける。そんな希望を、けいこさんの変化はそっと教えてくれます。

インタビュー日:2026年3月
ライター:りさこ

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